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星屑テレパスを読んだらアルジェントソーマと繋がった話

 星屑テレパスは現在まんがタイムきららで連載中の大熊らすこ先生による4コマ漫画作品であり、アニメ化も決定している作品である。

 主人公の小ノ星海果は他人とのコミュニケーション能力に難があり、自身が理解される場所を地球以外のどこかに存在するのではないかと夢想している女子高生である。

 そんな海果は自称宇宙人であり、おでこを合わせることで相手の考えていることがわかる能力を持つ明内ユウと出会ったことをきっかけに日常が変化していくのが星屑テレパスの物語である。

 星屑テレパスは作品のモチーフや物語の展開において宇宙やロケットなどの描写が多く出てくる。そのうえで「相互理解を持ちえない人間の内なる孤独」と「それを埋め合わせるコミュニケーション」が、この作品の根幹として強く表現されるテーマだ。

 そんな星屑テレパスをきらら本誌を定期購読している身でありながら最近までしっかりと触れてなかった筆者が最近読んだ結果、この作品からある作品を連想した。

 それがアルジェントソーマである。

 

 「黙ってちゃわからないだろう」

 アルジェントソーマは2000年から2001年に放送されたサンライズ制作のSFアニメだ。

 舞台は2059年、エイリアンの襲来によって多大な被害を受け、人類が対エイリアン対策にエイリアン対策特殊部隊「フューネラル」を作り上げた地球。

 主人公のタクト・カネシロは恋人のマキ・アガタとマキの師事するアーネスト・ノグチ教授が行うエイリアンの死体を繋ぎ合わせ、その死体 通称「フランク」を蘇生する実験に立ち会う最中、実験の事故により目の前で恋人を亡くしてしまう。

 フランクは実験により蘇生され逃亡、その最中でハリエットという少女と出会いフランクはハリエットを守るために行動するようになる。

 フランクはその後、フューネラルによって捕獲され タクトは恋人を失った復讐としてフランクを殺害するため、裏取引を経てタクト・シロガネの名と顔を捨て「リウ・ソーマ」としてフューネラルに入隊し、そしてフューネラルでエイリアンとの戦いに身を投じていく。

 

 色々とあるアルジェントソーマだが、そのテーマの一つはまさに星屑テレパスと同じ、「コミュニケーション」である。

 タクトは恋人、マキに対してマキが自分とのやり取りの中で黙ってしまうことに対し、口癖のように「黙っていちゃわからないだろう!」と強く当たり、死の直前の会話ではタクトは彼女の為に作った指輪を目の前で捨ててしまう。

 タクトとマキの間にはディスコミュニケーションがあり、タクトはアルジェントソーマ本編の中で幾度となくマキに対して強く当たったことを後悔し思い出す描写が入る。

 「黙っていちゃわからないだろう」は作中で何度もリフレインされ、同時に様々なキャラが口にするキーワードだ。

 そしてこれはまさに星屑テレパスと同じテーマを持つ作品たる部分である。

 星屑テレパスでは主人公の海果は極度のあがり症やコンプレックスにより、人前で上手に喋ったり思いを伝えることができない故に多くの場面で「会話」、「口にする」こと自体に辿りつけずにいる。

 その結果として、様々な亀裂やすれ違いを産んでしまう故に孤独を感じている構造だ。

 これはまさにアルジェントソーマの構造とそのまま繋がる。

 アルジェントソーマのキャラクターは海果のように、何らかの形で様々な孤独を抱えており、ディスコミュニケーションの中ですれ違っている。

 そんな彼らの間は時間と会話、心を通して少しずつ溝が埋まっていく。

 

 知ること、知りたいこと 傷つけることへの恐怖

 「探求心と好奇心と行動力、どれひとつ欠けても真実に到達はしない。」

 これはアルジェントソーマ本編で幾度となく出てくるセリフだ。

 作中でこれは科学者として、何かを探求する研究することへの心構えとして提示される言葉であるが、しかしこれがそのまま作中ではコミュニケーション、他者への理解、そして他者への思い、愛の原則の一つとして明示されている。

 しかし、同時に主人公のタクト・シロガネ(リウ・ソーマ)は、愛ゆえに他者を傷つけること、そしてその傷つけた自分を責め、自分の殻に閉じこもることで他者とのコミュニケーションの溝が埋まりにくくなってしまう。

 星屑テレパスの作中で提示されるキャラクターたちもまた同じだ。

 相手を知りたいと感じる、逆に自分が知りたいと思う故に傷つける可能性を恐れる。

 他者とのコミュニケーション、関りを求める故に畏れ、他者を遠ざけようとする。

 他者への探求心好奇心、そしてそれらを結びつける行動力があって初めて関係性は前に進むのだ。

 アルジェントソーマで提示されるテーマや言葉の多くは星屑テレパスに共通したものを持つ部分の一つだ。

 

 居場所の話

 アルジェントソーマで、主人公のリウ・ソーマは復讐のためにフューネラルに所属する。

 しかし、そんなフューネラルという場所が、ソーマにとっての一つの居場所となり、そして仲間たちにとっても フランクにとっても居場所であり「我が家」となっていく。

 星屑テレパスもまた、居場所が一つ機能的に作品内で提示されている。

 ロケット研究同好会は海果たちメインキャラクターたちが集う場所であり、孤独を感じる彼女たちが自分たちで作り出したコミュニティとしての居場所だ。

 「孤独を感じるものたちが集う場所」という形でのモチーフで描かれるフューネラルとロケット研究同好会は、2つの作品が『コミュニケーション』をテーマとしてるうえで大きな機能性を果たしているのだ。

 

 アルジェントソーマという作品のコミュニケーションという部分は非常に強く強調されている部分だ。しかし、この作品において初見ではそれ以外の部分を追いかけることに精一杯な作品でもある。

 しかし何故傷つくのか?何故傷つけあうのか そういった部分への着目やコミュニケーションにおける作りへの丁寧さは、何度も見返すことでより深く掘り下げられるだろう。

 それは星屑テレパスも同じである。星屑テレパスが明確に提示するコミュニケーションと宇宙、エイリアンとの要素的かみ合わせがアルジェントソーマへの理解をより深めてくれた。

 作品は1つの側面だけではなく、他作品から別の側面を見出すこともできる。

 そういった形で、またアルジェントソーマを見返す機会を与えてくれた星屑テレパスという作品に感謝したい。

 そして星屑テレパスの今後の展開にも期待している。

 

これはアルジェントソーマのエンディングにでてくるおっさん