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MUTEKING THE DANCING HERO 要素解説と考察

 2021年秋アニメとして放送されたMUTEKING THE DANCING HERO、この作品については本編内で説明されなかった要素が多く存在する。

 この本編内で解説されなかった要素について公式から言及があったのはサトウユーゾー監督のツイッター、MUTEKINGのニコニコ生放送による公式解説と、MUTEKING Super Hyper LIVE内でのファンからの質疑応答のみだと今のところは把握している。

 この記事では基本的にニコニコ生放送にて公式より言及のあった部分を紹介しつつ、MUTEKINGの各要素について考察していく。

 

 ・オクティアンはタコベイダー型宇宙人である。

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 タコベイダーとは前作、とんでも戦士ムテキングに登場するタコローやクロダコブラザーズの種族名である。元ネタは恐らく80年代に流行したインベーダーゲームから。

 タコベイダーには設定として「邪悪の心を持つと黒くなる」というのが存在し、MUTEKINGの作中でもヴィヴィ姉やDJが悪ダコ細胞に蝕まれた際に実際に黒くなっている描写が見られる。

 ・オクティアンは映像空間を創出することができる。

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 オクティアンは自身で映像空間を創出する能力が存在し、ムテキングやオーロラのダンス空間もそれらを応用したものとされる。(ここも公式で言及されている)

 作中でヴィヴィ姉の過去を振り返るシーンでもヴィヴィ姉によりこの能力が使われていると思われる。

 ・セオとヴィヴィ姉は共に地球を侵略するために訪れた。

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 セオとヴィヴィ姉は地球に侵略の為に訪れ、ヴィヴィ姉は人間界に同化し、セオを裏切ったと公式言及されている。

 セオの作中での目的は「人間を黒墨に変え、それを利用したコンピューターを創り出すこと」であったが、それがセオとヴィヴィの元々共通の目的だったのかまでは謎である。

 ・最終回においてセオが説得されるシーンの背景のウユニ塩湖のような場所は、オクティンク星(セオやヴィヴィの故郷)である

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 最終回でのムテキングVSムテキングブラックの戦闘において、「スーパーハイパービーム」を受けた後のセオはムテキングにより創り出された映像空間だと知らずに逃げている姿が描かれており(公式言及された部分)

 ミラーハウス等もムテキングにより創り出されたものである。その後、ウユニ塩湖のような世界での会話が行われるが、あのシーンはオクティンク星(セオやヴィヴィ姉の故郷)だと言及されている。

 ・ミラーボールはシリアス玉や救援玉のオマージュ

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 ミラーボールはMUTEKING作中においてはヴィヴィ姉が4兄弟の親から譲りうけたものとされ、作中でミラームテキングを生み出す等多くの活躍をしている。

 公式からの言及で、ヴィヴィ姉の過去のシーンにおいてミラーボールを使うシーンにおいて「シリアス玉的な…」と触れられていた。(画像を用意できず申し訳ない)

 シリアス玉、救援玉はとんでも戦士ムテキングにおける形勢逆転のために支援メカであるホットケソーサーが発射するもので、シリアス玉はムテキングを現実とは違った世界で戦う際の映像を投影するようなものとして扱われており、MUTEKINGにおけるオクティアンの映像創出技術の元ネタと考えられる。

 救援玉は後半でシリアス玉のストックがなくなったために用いられるもので、形勢逆転のために用いられるものとなっている。

 ミラーボールは他にも公式言及において「ミラーボールはそれを持った者に見たい映像を投影する」ともされ、MUTEKING作中で4兄弟がミラーボールをヴィヴィ姉から託された際にとんでも戦士ムテキングの時代の映像を投影している。

 ミラームテキングにより映し出されたオクティンク星のシーンでは、もしかしたらセオの心のうちにあるものであり、セオの故郷を映し出していたのかもしれない。

 ・黒墨について

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 公式からの言及から、

「人間が悪ダコ細胞を摂取し、オーロラの音楽を聴くと黒墨になってしまう」

「黒墨になった人間が元に戻る術は基本的に存在しない」

「モンスターは悪ダコ細胞が人間を分解した結果発生するもので、セオの元に黒墨を運ぶ」

「黒墨に完全に浸かってしまうと、その場合も黒墨になってしまう」

「黒墨はニンジャーズの素材である」

と語られている。

 なお、作中でトミーが黒墨に浮かんだ時に「どうやら浮かんでいるとセーフ」とも公式からの言及が行われている。

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 黒墨にされた人々にはまだ意識が存在しており、11話でムテキとDJが黒墨に取り込まれた結果人々の意識が活性化し、アイダさんへ人々の思いが届いたと公式で言及されている。

 ・サラとレジスタンスについて

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 サラ(ムテキの祖母)は初代ムテキングである遊木リンの娘であり、サラと関わりのある人物は基本的にオクティングの企みに対するレジスタンスであると公式で言及されている。

 少なくともオーウェン、アン、マット、トミー、ステキングはレジスタンスの一員であると考えられる。

 ・DJのラジカセは善ダコから生成されている

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 ムテキングの映像空間や変身の際の演出がラジカセから行われるのもこのためだと思われる。

 最終回で、ラジカセが悪ダコによって破壊されてしまったためにラジカセが流せなくなってしまったと公式で言及されている。

 ・最終回のラストにおける「誰かの美化された記憶」

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 言うまでもない部分ではあるが、MUTEKING第一話のわたせせいぞうオマージュ的なキャラクターデザインのシーンはアイダさん目線での美化された映像と作中で言及されている。

 最終回での映像もアイダさんの目線であるといえるだろう。

 ちなみに、オクティングのタワーが立っていたアルカトラズには遊園地が建設されつつあることが提示されている。

 

・公式インタビューを踏まえたMUTEKINGという作品について

news.yahoo.co.jp

akiba-souken.com

akiba-souken.com

 MUTEKING THE Dancing HEROは、「とんでも戦士ムテキング」を踏まえた作品として作られ、その過程で「80年代シティポップ」等のカルチャーを振り返った作品であることは明確であり、上記のインタビューでもそこについて触れられている。

 ポップカルチャーや過去作等の再評価が近年は行われており、2018年にはレディ・プレイヤー1等でそういった80年代大衆文化オマージュが行われ人気を博し、日本ではTM NETWORK等の再評価等が35周年記念の2019年に話題となった。

 タツノコはそれらの80年代を良くも悪くも引きずった作品を輩出しているアニメ制作会社であり、現在も続く人気シリーズであるプリティーリズムシリーズはそれが色濃く出ているシリーズでもある。

 MUTEKINGという作品はそれらの80年代カルチャーを踏まえた作品作りをするにあたって非常に「一貫性」の高い作品であるといえ、作中でも80年代オマージュ的要素が多く見られる。

 特にヴィヴィ姉はそれらのごった煮のようなキャラであり、野球、歌手、ドラッグクイーン、そしてゲームセンター。

 多くの文化の代表的キャラクターと言える。それらと対比的にセオという人物が配置されているといえるだろう。

 MUTEKINGが描く世界観は新しくもあり古くもある。そういった世界観は確実にある文化の延長線上にあるからであり、それは日本の「アニメ」にも全体的に言えることだろう。多くの演出技法、シナリオ、作品構造は過去作を踏まえて作られ、そして新しいものを生み出していく。

 今作で総監督を担当した高橋監督はボトムズダグラムを創り出したレジェンド級監督と言える人物であるが、MUTEKINGにおいては高橋監督はあくまで「今の時代」のために絵コンテ以降は任せる形で、サトウユーゾー監督の手伝いをするくらいの感覚で関わっていた旨がインタビューにおいて語られている。

 まさにMUTEKING THE Dancing HEROという作品もそれそのもので、現在を生きるヒーローであるムテキとDJはムテキングという過去作の延長線上に立ちながらも、自分たちらしさで戦い、未来に向かっていく。

 過去の歴史をリスペクトし、新しい歴史を創り出す。そういったアニメ作りをするタツノコのアニメとして、MUTEKINGはそういった姿勢を象徴するようなアニメであったと自分は思う。

 公式インタビューはMUTEKINGという作品が持つテーマ性やリスペクトの姿勢がよくわかるものとなっているので考察などにおいて非常におすすめなので、是非チェックしてほしい。

 

「そんなに急いでどこに向かってるの?」

「完璧な世界だ…!欲しいものがどんどん手に入る。便利なサービスに囲まれて…世界中が熱狂している! 違うか?ムテキング!」

「そうかもしれないね。」

「だろう?」

「でも、わかったんだ。答えは一つじゃないって。」